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2023.1.16

【対談】インフラロボットメーカー(株)イクシス/SBIインベストメント(株)

神奈川県川崎市・新川崎地区にある技術系スタートアップのオープンイノベーション拠点『かわさき新産業創造センター(KBIC)』に入居している株式会社イクシスは、2022年6月30日、シリーズBエクステンションラウンドとして総額10億円の調達を発表いたしました。今回、リードインベスターとして出資されたSBIインベストメント株式会社と株式会社イクシスにインタビューを行い、それぞれが見据える未来について伺いました。

デジタルツイン市場における世界に通用するDXサービスを展開するイクシスと、デジタルアセット戦略を掲げるSBIインベストメントが見据える未来とは?

<インタビュイー>
山崎 文敬 氏(株式会社イクシス 代表取締役Co-CEO兼CTO)
河村 暁 氏(SBIインベストメント株式会社 投資部 次長)

■イクシス社との出会いについて

河村:
 私は、国内の人口減少及び少子高齢化による労働者不足という社会課題に対して、「テクノロジーの力を活用して解決していくこと」を投資テーマとして投資活動を行っています。加えて「デジタルツイン」または「メタバース」という巨大市場をリサーチしていました。

 そのなかで、レガシー産業における真に必要な技術が不足している「建設・プラント業界」をウォッチしていました。将来的に、「ロボティクス」や「3Dシステム」を活用することで、これまでデータ化されていないものを「デジタル上で最適化を図ることができる時代」が来ると考えていました。

 また、弊社の運用するSBI 4+5ファンド(SBI 4&5投資事業有限責任組合、SBI 4&5投資事業有限責任組合2号の総称)のコンセプトには、第四次産業革命(Industry4.0)の中で新市場を開拓するというものが含まれています。デジタルツインはIndustry4.0の技術革新の一つと言われており、このような視点から投資活動をしている中で2019年にイクシス社と出会い、今回出資させていただきました。

山崎:
 私は、1998年の創業以来、「使える」「使い続けられる」ロボットを社会に提供していきたいと考えており、創業まもなく「インフラ」という領域で様々な課題があることを知り、この領域で当社の技術を使って貢献していこうと専業化してきました。
 しかし業界でロボットを活用していただくためには、ロボットの知識や開発能力だけでなく、その業界の知見がないと顧客の真のニーズにこたえることができないことが分かり、私やエンジニア全員が現場に足繫く通い、まずは専門用語を習得し、インフラの課題や運用方法などロボットの開発仕様書からは見えてこないニーズを理解することに努めました。

 インフラ業界に特化したロボット開発を進めていく中で、現場でロボットが当たり前に動き始めると顧客の興味がロボット本体から取得するデータの方に移り始め、当社としてもいかに「きれいに」「網羅的に」データを取得できるかという技術開発へと変化してきました。
 そこで2019年に外部からの出資を受けて、ロボットの開発ベンチャーからロボットを活用したデータサービスの会社へと大きくビジネスモデルを転換しました。

■イクシス社の強みについて

河村:
 イクシス社は、社会・産業インフラ分野での長年の知見に加えて、ハードウェア/ソフトウェアの両面からのアプローチによる尖った技術を活かし、「ロボット×AI/XR×3Dデータ連携」によりデジタルツイン領域でNo.1を目指す、国内で唯一無二のベンチャーです。
 ユーザーファーストで、地に足の着いたプロダクト開発を行う思想を持つからこそ、多くの巨大企業との共同研究実績を積み上げ、急成長をしていると思います。
 イクシス社が提供するDXソリューションは、2023年に原則3Dデータ活用の導入が進行する公共工事はもちろん、幅広い業界で活用可能です。ドローンでは、どうしても取得した画像データの精度が落ちてしまい、場合によっては取り直しというリスクが実際に起きてしまいます。一方で、イクシス社の「走行ロボティスクス技術」と、「リアルタイムで、国内で最も精緻なデータ(位置情報含む)を一発で取得可能な技術力」は、大企業でさえ実現できていないものです。イクシス社の株主である複数の事業会社はその点を評価したのではないでしょうか。
  国内・海外にてこれらに関する基本特許を取得済であり、更には海外に対して、3 次元に特化した応用特許を出願しており、海外からの引き合いも増えているようですね。

山崎:
 ロボットを使ってインフラで様々なデータサービスを行うメリットとしては、取得できるデータに位置情報が付与されることです。インフラにロボットを投入してデータ取得をすると膨大なデータが得られます。特にインフラ構造物の多くが繰り返し構造となっているため、取得したデータだけを見てもそれがどの部位なのか特定するのが非常に困難です。取得したデータからAI等を使って損傷解析をする場合においても、構造物のどの部位かによって、同じ解析結果でも構造物に対しての重要度が大きく異なります。
 そうなるとデータと位置情報をセットで3次元空間上で管理することが重要となり、3次元のサイバー空間と現実空間を双方向でリアルタイムに連携できる「i-Con Walker®」技術を開発しました。本技術によりサイバー空間を逐次更新できるようになります。

■デジタルツイン市場について

河村
 デジタルツインの世界市場規模は、2021年に49億ドル、2026年におよそ502億ドル、市場の平均年成長率は59.0%に達すると予測されています(出所:米国の調査会社 BCC Research社)。Industry4.0の潮流の中で製造業、農業、エネルギー、公共事業、ヘルスケアなど様々な業界で「自動化やデータの取得・分析」に焦点を当てた技術として活用が進んでおり、今後とも大幅な市場拡大が期待されています。
 デジタルツインは、コスト削減、業務最適化、新規事業・サービス創出などを行うための技術として、製造、建設、石油、化学、スマートシティなど様々な分野での活用が期待されています。イクシス社はハードとソフトを掛け合わせた類を見ない強固な技術力により、デジタルツイン領域で国内No.1のポジションを目指せるのではないかと思います。

山崎
 国土交通省はICT活用工事を当初の2025年度迄から2023年度迄に2年前倒しを行い、全ての公共工事(小規模を除く)について、BIM/CIM(3次元モデルの導入)活用への転換実現を目標としています。
労働人口が減少する一方で、測量・点検箇所が膨大となっており、自動ロボットによる省力化の期待が高いところから、BIM/CIM本格導入化していく局面に入っているのではないかと私は見ています。

■イクシス社に期待すること

河村:
 イクシス社は今後、「スマートシティ構想」においても大いに飛躍していく可能性を秘めています。更には、既存の地域をデジタル化・スマート化する「ブラウンフィールド型」と、工場跡地や未開発地域を民間主導で開発する「グリーンフィールド型」の両面におけるデジタル化を成し遂げる経営陣と技術集団を揃えています。
 ゼネコン、プラント、製造業、スマートシティなどの多くの領域にてデジタルツインが利用される時代・・・・世界に通用するメガベンチャーになることを期待しています。

山崎:
 スマートシティをはじめ、今後、現実空間の情報をジオメトリ情報(位置や形状)の変化も含めサイバー空間をリアルタイムに更新する技術は各所で必要になると考えております。
 そのためにはワンストップで顧客に価値を提供できる体制が必要だと考えられており、更には他社との協調によりそのセンシングや、作業などのアクチュエーションのバリエーションを増やしていくことが求められます。
 「i-Con Walker®」は、今後の宇宙開発における超遠隔地のデジタルツインをも見据えた技術となることを期待しています。

企業名株式会社イクシス
設立1998年6月
所在地神奈川県川崎市幸区新川崎7-7 AIRBIC内
代表者Co-CEO兼CTO山崎 文敬、Co-CEO狩野 高志
事業内容社会・産業インフラ向けロボット及び特殊環境対応型ロボット等の開発・販売
取得データのAI解析サービス、3D-Data Solutionサービスの提供
HP URLhttps://www.ixs.co.jp/